題材4 複素環をSMILES・構造式ファイルから作る(カフェイン)
骨格テンプレートにない縮合環の分子は、SMILES(1行の構造式)か、ほかのソフトで描いた構造式ファイルから作ります。カフェインをSMILESから3Dで作る方法と、2次元で描いた .sdf を開いて水素を補い、3D構造を作り直す方法の2通りを試し、B3LYP/6-31G*で構造を最適化します。
| 作るもの | 内容 |
|---|---|
| 分子 | カフェイン C₈H₁₀N₄O₂(24原子・電荷 0・一重項) |
| 使う機能 | SMILESから作成、パレットの検索からのSMILES、構造ファイルを開く、水素を補完、3Dを再生成、骨格テンプレートの複素環 |
| 計算 | B3LYP/6-31G*、構造最適化 |
| 計算時間の目安 | 約59分(MPI 6プロセス、ほかの計算と並行) |
| 計算環境 | AMD Ryzen 7 2700X(8コア・16スレッド)、メモリ 32 GB、NWChem 7.3.1(Linux) |
| 練習データ | caffeine.molforma.json(SMILESから作った構造)、caffeine_2d.sdf(水素のない2次元の構造式) |

1. SMILESから作る
- 「ファイル → SMILESから作成…」を選びます(ヘッダー左のファイル名のメニューにも同じ項目があります)。
-
入力欄に
Cn1cnc2c1c(=O)n(C)c(=O)n2Cを入れて「3Dで作成」を押します。Open Babelが水素を付けて3D構造を作り、力場(MMFF94)で整えた結果が候補になります(「変更候補: SMILESから分子を作成」)。別プロセスで動くので、時間がかかる分子では3D画面の上の「整形を中止」で止められます。
図1 「ファイル → SMILESから作成…」のダイアログにSMILESを入れて「3Dで作成」を押します。
-
候補が C8H10N4O2 · 24原子 · 25結合であることを確かめて「変更を確定」します。芳香環の結合は破線付きの二重線で表示されます。

図2 3D構造は候補として表示されます。原子数と結合数を確かめて確定します。

図3 確定したカフェイン(C8H10N4O2 · 24原子)。
SMILESを読めないときは理由を表示し、「SMILESを修正…」で入力し直せます。今の分子を残したまま横に加える場合は「ファイル → SMILESから断片を追加…」を使います。部品パレットの検索欄にSMILESを入れると、どの部品にも当たらない場合に「SMILES「…」から3Dで作成」が出て、クリックすると今の分子の横に候補を作ります。
2. 2次元の構造式ファイルから作る
構造式エディタで描いて書き出した .sdf / .mol は、平面の座標(z = 0)で水素がないことがよくあります。
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「ファイル → 開く…」で
caffeine_2d.sdfを開きます。重原子だけの C8N4O2 · 14原子が平面に並びます。
図4 2次元の構造式ファイルを開いたところ。水素がなく、原子が平面に並んでいます。
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3D画面の上の「水素を補完」を押します。足りない水素が付いて C8H10N4O2 · 24原子になります(原子を選んでいなければ全体が対象)。

図5 「水素を補完」で足りない水素が付き、24原子になります。形はまだ平面のままです。
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「ツール → 3Dを再生成」を押します。結合から3D座標を作り直し、力場で整えた結果が候補になります(「変更候補: 3Dを再生成」)。確かめて「変更を確定」します。

図6 「ツール → 3Dを再生成」の結果は候補として表示されます。
開ける形式は XYZ・MOL・SDF・Mol2・CML・PDB・NWChem入力(.nw)・Gaussian入力(.gjf)です。XYZは結合を距離から推定するので、イオンでは形式電荷を設定してから水素を補完してください。座標の表の「構造 → 構造ファイルを読み込む…」で読むと、計算条件を残したまま構造だけを置き換えます。
3. テンプレートとの使い分け
骨格テンプレートには単環の複素環(ピリジン・ピロール・フラン・チオフェン・イミダゾール・ピリミジン)とナフタレンがあります。これらに置換基を付けて作れる分子はテンプレートから組み(題材3)、プリン骨格のような縮合複素環や大きな分子はSMILESか構造ファイルから作ります。
4. 計算して結果を見る
- 「2 計算条件」で、計算目的を「構造最適化」、手法を「DFT」(B3LYP)、基底関数を「6-31G*」にします。全電荷 0・多重度 1です。
-
「計算を実行」(F5)で計算します。

図7 計算後の「結果ビューア」の「概要」。

図8 「最適化」タブ。初めの数ステップでエネルギーが大きく下がり、残りはメチル基の回転などの小さな調整です。
実行した結果
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 計算のエネルギー | −680.376988294 Eh |
| 構造最適化 | 29ステップで収束 |
| 双極子モーメント | 3.83 D |
縮合環の骨格は初期構造(SMILESからの3D)でほぼ決まっていて、ステップの多くは3つのメチル基の回転に使われます。振動数も計算すると、極小であること(虚振動なし)を確かめられます。
うまくいかないとき
- 「SMILESを解析できません」括弧・環番号の対応、芳香族の小文字(
c・n)の書き方を確かめます。電荷は[NH4+]のように角括弧で書きます。 - 2次元のまま平らになっている「3Dを再生成」を使います。「全体整形」は今の座標から力場で整えるだけなので、平面の初期構造から立体を起こすには向きません。
- 固定原子があると3D再生成できない3D再生成は全原子の座標を作り直すので、固定原子があると拒否します。
関連: 「1 分子」の右側のページの構造ツール、座標の表、題材14 計算結果から次の計算へ。