MolForma

題材から選ぶ実習(分子を組んで計算するまで)

MolFormaの画面操作だけで分子を組み、NWChemで計算して結果を確かめるまでを、題材ごとに1本の手順で通す実習です。作りたい分子に近い題材を選ぶと、そこで使う機能(原子と結合、骨格・置換基、配位中心と配位子、配列からのペプチド、立体の指定、点電荷、BSSE補正、遷移状態探索、計算結果の取り込み、同位体、マイ部品など)をひととおり試せます。

各ページの計算は、2026-10-26にAMD Ryzen 7 2700X(8コア・16スレッド)・メモリ 32 GBのPCで、NWChem 7.3.1(Linux、MPI 2〜8プロセス)を使って実際に実行した結果を載せています。各ページの「計算時間の目安」もこのPCで測った時間で、CPUの性能やコア数、MPIの並列数、同時に動かしたほかの計算によって大きく変わります。NWChemの版や並列数によって、エネルギーの末尾の桁や最適化のステップ数も変わることがあります。

この実習の使い方

組み立てた構造と計算結果を区別する

部品を置いた直後や「全体整形」の後の構造は、計算の初期構造です。「全体整形」はOpen Babelの力場(MMFF94・UFF)で形を整える操作で、NWChemの構造最適化とは別です。最適化した構造を次の計算に使う場合は、「結果ビューア」の「分子へ候補として適用」で取り込みます(題材14)。

計算の全電荷と多重度は「2 計算条件」の「電荷・スピン」で決めます。原子の形式電荷(「属性」ページ)は水素補完などの構造の準備に使う値で、全電荷とは別に管理します。残基・断片・配位中心・配位子の追加では、変更前の全電荷が構造から見込まれる値(形式電荷の合計、配位中心は酸化数)と一致していれば、新しい値に合わせます。多重度は推測しないので、ラジカルや開殻の金属を含む分子では自分で指定します。

題材の一覧

No. 題材 作る分子 主に使う機能 計算
1 原子と結合から組む エタノール(9原子)、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル 原子の配置・水素の置き換え、削除、結合の種類、結合への原子の挿入、全体整形、距離の測定 B3LYP/6-31G* 最適化 → 振動数
2 配位化合物・金属錯体 trans-[Co(en)₂Cl₂]⁺(27原子・電荷 +1) 配位中心・配位形状・酸化数、二座配位子、配位子の連続配置、電荷の追従 B3LYP/def2-SVP 構造最適化
3 芳香族の置換体 p-ニトロアニリン(16原子) 骨格テンプレート、置換基による水素の置き換え、o・m・pの作り分け B3LYP/6-31G* 最適化 → 振動数
4 複素環をSMILES・構造式ファイルから作る カフェイン(24原子) SMILESから作成、2次元の構造式ファイル(.sdf)、水素の補完、3Dを再生成 B3LYP/6-31G* 構造最適化
5 鎖状分子と配座 n-ブタンのanti・gauche 二面角の測定と数値指定、名前を付けて保存、緩和スキャン B3LYP/6-31G* 緩和スキャン(13点)
6 立体化学 乳酸のR体・S体、2-ブテンのE体・Z体 立体を記録(R/S・E/Z)、不斉中心を反転、E/Zを切替 B3LYP/6-31G* 最適化 → 振動数(E/Z)
7 ペプチド ACE–Ala–His–Glu–NME(54原子・電荷 −1) 配列から構築、末端キャップ、側鎖の状態、配列の表示 B3LYP/6-31G* 一点(COSMO・水)
8 残基の置換と鎖の編集 His→Pheの変異体(57原子)、ACE–Ala–Glu–NME(37原子) 選択残基を置換、残基を削除(鎖を分割)、2末端の再連結 B3LYP/6-31G* 一点(COSMO・水)
9 分子間錯体とBSSE補正 ベンゼン–水の二量体(15原子) 2分子目の配置、主慣性軸へ整列、座標の表の編集、BSSE(counterpoise)補正 MP2/6-31G* 一点(BSSE補正)
10 イオンとラジカル フェノール、フェノキシラジカル(二重項)、フェノラート(電荷 −1) 水素の削除、不対電子・形式電荷、多重度と参照波動関数 B3LYP/6-31+G* 最適化 → 振動数
11 主族元素の分子 SF₆(八面体)、PF₅(三方両錐) 金属以外の配位中心、配位形状、フッ化物配位子、回転対称数 B3LYP/6-31G* 最適化 → 振動数
12 溶媒和クラスターと点電荷 [Na(H₂O)₄]⁺ と外側の水のTIP3P点電荷 指定間隔で複製、水を点電荷に置き換え、外部点電荷の出力 B3LYP/6-31G* 最適化と一点
13 遷移状態と反応経路 F⁻ + CH₃Cl の遷移状態 [F···CH₃···Cl]⁻ 原子の単独配置、距離・角度の数値指定、遷移状態探索、IRCとその方向 M06-2X/aug-cc-pVDZ 遷移状態探索 → 振動数、IRC
14 計算結果から次の計算へ 最適化したp-ニトロアニリン 履歴、結果ビューア、分子へ候補として適用、励起状態(TDDFT) CAM-B3LYP/6-31+G* TDDFT
15 同位体と原子の並び順 エタノール-OD 同位体・質量、座標の表、原子を並べ替え B3LYP/6-31G* 振動数
16 自作の部品(マイ部品) トリメチルシリル基を付けたベンゼン 選択原子を部品として保存、部品ファイル、マイ部品の配置 B3LYP/6-31G* 構造最適化

この実習にない題材

MolFormaが作るのは有限個の分子(と外部点電荷)で、計算はNWChemの分子向けの機能を使います。次のものは対象外です。

MCPクライアント(AI)から同じ操作を言葉で頼むこともできます。ツールの一覧と例は「MCPサーバー」にあります。